"ナレッジ" is "アセット" 書評vol.4『完全独習 統計学入門』
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数理的な科学における推論は、これまでずっと演繹法が中心でした。ところが、20世紀になって、統計学がついに帰納的な推論を「数理科学として」構築することに成功したわけで、これは画期的な出来事だと言っていいと思います。
『完全独習 統計学入門』 小島寛之著
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ここ二、三ヶ月ほど、統計の本を30-40冊ほど読んでいる。
学位論文のために統計の理解が足らないと思ったのと、Pythonをいじり始めたので、機械学習アルゴリズムの勉強のために、統計論を理解する必要があるためだ。
素人向けのものから、専門書まで読んだが、いいものが色々ある。
究極的には、有名な赤本
https://www.amazon.co.jp/%E7%B5%B1%E8%A8%88%E…/…/ref=sr_1_1…
や
また
チュートリアル形式で、プログラミングソフト"R"をいじることで統計処理ができるようになるこれ
https://www.amazon.co.jp/R%E3%81%AB%E3%82%88%…/…/ref=sr_1_1…
など
どれも勉強になった。
統計学は、確率論や推論、微分など数学的な考え方を色々わかっていないとダメなのだが、なかなか難しい
1冊目に何を読んだらいいか?
結論からいうと、この本である。
これが最強
実例を用いて、平均/分散などの超基本から、区間推定、t検定などを網羅しているのだが、
こう言った本が、数学的な照明が難しいところを省かざるをえないが、それによってわからなくなったり、説明しすぎて、よりわからなくなったりする。
しかし、この本は著者の語り口と、ピンポイントで必要になる数理的な説明がほどよく、バランスが絶妙なのだ。
標本分散がカイ二乗分布に従う時、自由度がn-1になる理由がいまいちわからなかったが、理解できた。
まず、これを読み、
Rをいじりながらこれをやる
流れが最短距離か。
- 作者: 小島寛之
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/09/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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"ナレッジ" is "アセット" 書評vol.3『総合商社論』
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商社ビジネスとは、まずはサプライ・チェーンの重要セグメントのトレーディングで競争優位を確立し、次いでサプライチェーンの川上・川下段階に直接的間接的に事業展開して、トレーディングの収益力の強化とサプライチェーンへの影響力を高める点に本質があると考える。『総合商社論』榎本俊一
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私は、医療機関、患者に医療サービスをじかに提供する病院/診療所を中心とし,ITその他のヘルスケアサービスを擁する、医療サービスの"総合商社"を作るつもりである。
言ってみれば、
右手に"病院"、左手に"企業"
ワンストップで一連のサービスを、同一の組織体で提供するグループの運営を目指している。無論株式会社の医療法人の支配は厳しく制限されている。また医師会の意向で医療法人は非営利の方向性は維持される方針だが、どこかで長期的には潮目が変わると読んでいる。
(なお、三井物産がタイのアジア最大の医療グループに出資している)
さて、"総合商社"とは一体何をやっているのか?
以前は名前の通り、貿易で手数料をとっていた、中間卸業者であったが、現在は、事業投資でアジアを中心に開発を行い、連結利益で稼いでいる"投資会社"である。(ソフトバンクグループに近い)
実はこれは、世界的にみるとかなり独自のビジネスモデルである。
Black rockやCarlyleといった、未公開企業に出資し、売却で利ざやを取る、プライベートエクイティファンド(PEファンド)とも違う。
私は"医療サービスグループ"として、現場としての医療機関を中心に据え、IT、メディアといった事業会社がシナジーをもって、お互いに機能するイメージが理想なので、総合商社のビジネスモデル、とりわけ"value chaine"に興味があった。
本書は、90年代に資産価値の下落により、存亡の危機に瀕していたが総合商社が、どのように投資会社へと変貌し、V字回復をしていったかが、書かれている。三菱商事は経済学者マイケルEポーターが提唱した"value chaine"を、用い、商流の川上から風下まで、抑え、さらに統計的な手法を駆使して、リスクヘッジを行いながら、事業投資を行っている。
同じことを繰り返し書いているので、専門書としてとして内容は薄いのだが、門外漢としては、頭に入るので良かったと思っている。
"ナレッジ" is "アセット" 書評vol.2『シュードッグ』
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私にとってビジネスとは金を稼ぐことではない。人体にとっては血液が必要だが、血液を作ることが人間の使命でないのと同じだ。Phil Knight "SHOE DOG"
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昨年NIKEの本拠地、Oregon州に行った際に、ちょうど発売直後で、どこに行っても大量の平積みになっていたのを思い出した。
書籍とは、優れた音楽を聴いた時のような濃密な体験を得られる本、実用的な情報が書いてある本、ただの文字が羅列してある本(ゴミ)の3つに分かれる。
1番目の要素を満たしている本は本当に稀であるが、この本はそのうちの一冊である。
NIKEはイノベーション企業である。スポーツシューズはNIKEの登場まで、スポーツの時に履くもので、日常に履くものではなかった。今考えると信じられないが、"日常のライフスタイルにスポーツを取り入れる"ことを社会に浸透させ、新たなマーケットを創出した。これこそがクリステンセンの言う"破壊的イノベーション"である。
NIKEが国際的なグローバル企業になる前に創業期の葛藤を綴った本であるが、こういった本当に成功した起業家の創業期に必ず共通するのが、"ビジネスが泥臭い"ということである。輸入していた日本企業と折り合いが悪くなる、資金繰りが苦しくなり銀行に見捨てられそうになる、中国に進出する際に党の大物の息子を抱き込んで、中国共産党とのパイプを作る。今だから言えるような、際どいことをこれ以外にかなりやっている。
日本は起業が少ないことを理由にやたらハードルを下げて国もマスコミも起業を煽っているのだが、エクイティファイナンスでリスクをとらずに、国から補助金をもらっているような大方のベンチャーに対して直感的に「こいつらは儲からないだろうな、、、」と根拠なく思っていた。一層、その考えが確信に変わった(無責任だが、もちろんいまだに根拠はない)。この本のターゲットはシリコンバレーや起業に憧れている"意識高い系"が射程圏内だろうが、おそらく彼らは共感できないだろう。
あと特記すべきは、氏が公認会計士であり、ファイナンスに長けていた点、また、銀行の小切手が不渡りになる時に、日商岩井の担当者(日本人)が全額肩代わりする場面に震えた。高度経済成長期の日本の総合商社はカッコよかったんだなと、再認した。
"ナレッジ" is "アセット" 書評vol.1『金融』